
鳴門だけのフレンチ
新潮流キュイジーヌNaruto's Exclusive French : The New Current
フランス料理 ボナキュー
鳴門といえば、豊富な魚介類や肥沃な大地で育つ野菜など、食材のポテンシャルが高いことで知られている。鳴門の風土の中で食材と向き合いその滋味を生かした鳴門だけのフランス料理を創出すること、これを新潮流キュイジーヌと名付けたい。
四国の豊かな山海の幸にオマージュを込めて
徳島県のきのこ・天恵菇(てんけいこ)と愛媛県の中山栗をつかったスープ「ヴルーテ」とはベルベットを意味するフランス語で、なめらかで舌触りのよいスープであることを表現している。小さな器にきのこの旨味がぎゅっと凝縮され、ひと口いただけば、シャンパーニュがつい進んでしまう、味わい深い秋のアミューズである。
前菜にはオマール海老が登場する。ミネラルたっぷりのみずみずしく仕上がったオマール海老に合わせるのは、高知県産のキャビア。高知県仁淀川河口付近の伏流水で大切に育成されたチョウザメのキャビアは、塩分を抑え低温熟成されてクリーミーな味わいとなり、オマール海老の圧倒的な旨味と濃厚な甘味にキャビアが繊細な味わいで寄り添っている。
温前菜では、フォアグラとキタアカリのニョッキのハーモニーを味わっていただく。さぬきうどんにつかわれる中力粉をつかったニョッキは、もちもちとした食感がとても印象的で、茹でずにオーブンで何度もひっくり返しながら丁寧に焼き上げたものだとか。フォアグラの濃厚な旨味とよく合うことはいうまでもない。さらに高知県産の生姜をベースにしたソースが、後味にほんのりと清涼感を残してくれて、次の阿波晩茶をつかった天然平目の料理へとスムーズにつないでくれる。
メインの肉料理は、徳島県の「阿波牛」に、なると金時を薄くスライスしてチップスにしたもの、素材感を残したエクラゼ、泡状のエスプーマ、なめらかなピューレの4種類。それぞれに食感と味わいの印象を変えながら楽しむことができる。
アミューズ 愛媛県産中山栗と天恵菇の
旨味を閉じ込めたヴルーテ
日本茸師の会が徳島県において開発した「天恵菇(てんけいこ)」。通常の椎茸に比べ旨味が強く、肉厚でジューシーな食感が特長の天恵菇と、日本三大栗のひとつ・愛媛県の「中山栗」をつかって、秋の実りを感じさせるひとくちの温かいスープが、食事のはじまりに。
前菜 高知県産キャビアと
オマール海老が織りなす海のコンポジション
低温熟成で大粒のクリーミーな味わいの高知県産キャビア。その控えめな塩分がミネラルたっぷりのオマール海老の甘みと繊細なハーモニーをつくりだす。絵画のような盛り付けとともに、フランス料理らしい前菜のひと品に仕上がっている。
温前菜
トリュフ香る香川県産キタアカリのニョッキとフォアグラ
高知県産生姜のソース・ジャンジャンブル
ホクホクした食感のキタアカリにトリュフオイルを混ぜて自家製のニョッキに。フォアグラはミ・キュイでとろけるような仕上がりに。数種類のきのこやトリュフをつかって、高知県産生姜でエッセンスを効かせたソースに合わせて。
魚料理 徳島県産天然平目のア・ラ・ヴァプール
阿波晩茶のクルートとエキューム
阿波晩茶と天然平目のマリアージュは
鳴門だけで味わえるフランス料理の逸品
天然平目を蒸し、徳島が誇る「阿波晩茶」の茶葉をつかって香ばしく焼き上げたひと品。合わせるのはクラシックフレンチスタイルで、白ワインのソースをたっぷりと。阿波晩茶の深みある香り・天然平目・白ワインのソースの三位一体に注目したい。
肉料理 藁の香りを纏う阿波牛フィレ肉
なると金時のヴァリエ ソースエスパニョール
上品な脂の甘さと、きめ細やかな霜降りの両方をもつ徳島伝統の黒毛和牛「阿波牛」のフィレ肉。豪快に藁でいぶしながら焼くことで、スモーキーな香りが肉の特徴を際立たせる。フォンドヴォーで丁寧にとられた深みのあるソースを添えて。
デザート 香ばしくロティした無花果とフロマージュ
松島産ブルーベリーの爽やかなソルベ
じっくりローストすることで甘味を凝縮させた無花果に濃厚なチーズケーキを合わせて。さらに酸味と甘味のバランスがよい徳島県小松島のブルーベリーをソルベに。濃厚なのに爽やかな“大人のデザート”である。

グランドエクシブ鳴門
フランス料理 ボナキュー
須﨑 周 Shu Suzaki
香川県出身。東京や香川県のレストランで修業後、2019年にリゾートトラストに入社し、グランドエクシブ鳴門フランス料理ボナキューに着任。2024年10月にシェフ就任。休日には近隣の食材産地に出かけて、生産風景を見学したり収穫を手伝ったりしながら生産者とコミュニケーションをとり、食材と向き合う。橋を渡って鳴門まで行きたいと思っていただけるような、鳴門らしい唯一無二の料理をめざす。
地産の食材を訪ねて阿波晩茶Awabancha
茶葉は、毎年7月から8月にかけて、
すべて手作業で収穫される。
手摘みして木桶発酵し天日干しする伝統的な手仕事
阿波晩茶とは、徳島県の那賀郡那賀町と勝浦郡上勝町で主につくられている乳酸菌発酵のお茶のことをいう。お茶は、玉露や煎茶などに代表される不発酵茶と、ウーロン茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶に分けられるが、阿波晩茶はそれらとは異なる後発酵茶である。酸化させてから加熱する発酵茶に対して、後発酵茶は最初に加熱してから発酵させるため、まろやかで深みのある味わいとなるのが特徴だ。阿波晩茶が“番”ではなく“晩”の字をつかうのは、一般的な不発酵の番茶と区別するためだ、ともいわれている。
大小の茶葉がまじっているのは手摘みならでは。
一般的な番茶とは違い、透明感のある山吹色のお茶になる。
揉まれた茶葉は、茹で汁とともに木桶に漬けこんで
10日から14日ほどかけて発酵させる。
阿波晩茶農家の𠮷田敏美さん(右)と、須﨑周シェフ(左)。
グランドエクシブ鳴門のフランス料理ボナキューでは、阿波晩茶を料理に積極的に取り入れて、鳴門でしか味わえないフランス料理を創り出している。今回は、須﨑周シェフが懇意にしている阿波晩茶生産農家・ファームヨシダの𠮷田敏美さんを訪ねた。須﨑シェフは収穫を手伝うこともあるらしく、味わいにすっかり魅了されているのだとか。「タンニンも刺激も少ないため、子どもに飲ませても大丈夫だといわれています。だから繊細な味わいの料理との相性がよいのかもしれませんね」と𠮷田さん。「一度沸騰させたお湯を80℃くらいまで冷ましてから淹れるとすっきりとした山吹色の美味しいお茶になります。この繊細な茶葉を生かすため、茶葉を香ばしく煎ってからパウダー状にして平目にまぶし、茶葉の香りごと加熱すると、阿波晩茶独特の酸味と、白ワインのソースがぴったり合います。この他、クッキーなどの焼き菓子にも阿波晩茶をつかっています」とシェフ。生産者との交流から新たな料理の発想が生まれると語るシェフの、食材探しの旅はこれからも続くだろう。

