
TOMOKO YAMAGUCHI
1964年生まれ。1988年NHK朝の連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』でデビュー。数々の映画、ドラマで活躍。30代のころから旅をライフワークとし、2010年には世界の音楽文化を映像ライブラリーに収めるプロジェクト『LISTEN.』を立ち上げる。また、この長年のプロジェクトをまとめた同名の著書では、二次元コードから音楽映像を体感できる。2023年YouTubeチャンネル『山口智子の風穴!?』を開設し、好評配信中。
エクシブ湯河原離宮 岫雲橋
数々のトレンディドラマで一世風靡し、“視聴率の女王”とも呼ばれた俳優の山口智子さんをエクシブ湯河原離宮にお招きした。近年は世界各地を巡る旅の達人としても注目され、旅の魅力を発信するYouTubeチャンネル『山口智子の風穴!?』も人気を集めている。その生き方は、どんなドラマよりもエキサイティングで味わい深い。一昨年還暦を迎え、心境にも変化があったとのこと。早速、お話をうかがってみよう。
昨年還暦を迎えられたそうですね。
私が想像していた還暦のイメージとは大違いで、とてもチャレンジングな楽しい年になり、まさに生まれ変わった気分でした。60年分の荷物や鎧から解き放たれて、赤ちゃんのようにまっさらな気持ちで自分の興味に突進していいんだよと、神様がくれた節目なのだなと感じました。心が軽くなって、気分も明るくなって、怖がらずにあらゆることを一から始めなさいと背中を押してもらったように感じて、様々なことに挑戦しました。私たちの地球滞在時間は限られていますから、その期限を改めて心に刻むことで、これからの人生の一瞬一瞬を、よりよく、濃く生きていけると思います。
旅は山口さんの人生にどんな瞬間をもたらしてくれるのですか。
私は何かと考えすぎてしまうタイプです。そこから解き放ってくれるのが「旅」かもしれません。旅するうちに、風を読む、流れをつかむといった動物的な感性が呼び覚まされるように感じます。論理的な思考にとらわれすぎず、出会った瞬間をしっかり味わいながら、右か左か、イエスかノーかを選び取って進路を導く。旅は楽しい修行です。
辺境の地を何度も旅しているとか。
若いころはエネルギーが有り余っていましたから(笑)。今なら臆して避けてしまうような場所を何度も訪れました。南米大陸にある南北に細長い国・チリは、2回縦断したことがあります。約30年前です。インターネットが今より普及していない時代ですから、限られた情報しかない。でも、未知の世界への憧れに駆り立てられ、「地球の歩き方」の本を読み込んで向かいました。充分なリサーチをして出かけることはとても大事ですが、もっと地球を学びたいという情熱で一歩踏み出せるのは、若さの特権ですね。
イタリア料理 リストランテ マレッタ
音楽をテーマにした旅のプロジェクト『LISTEN.』のお話も聞かせてください。
2010年から10年間かけて世界の様々な国を訪れ、それぞれの風土に育まれ受け継がれてきた、生きる力を生み出す素敵な音楽を取材し、映像ライブラリーに収めてきました。北極圏にあるバフィン島(カナダ)では、先住民族のイヌイットに歌い継がれる「喉歌」を追い求めて犬ぞりで疾走したり、南米のパタゴニアでは、大平原で生きるガウチョ(カウボーイ)と一緒に馬で駆け巡ったり。『LISTEN.』というミッションを背負うことによって、過酷な旅の道のりにも挫けることなく、一歩を踏み出し続けることができました。
旅と音楽を通じて、どのようなことを感じましたか。
風土が美味しい食べ物や水を育むように、毎日の暮らしの中から唯一無二の素敵な歌やリズム、ダンスが生まれます。世代から世代へと受け継がれてきた、その土地ならではの音楽には、「また明日がんばろう!」という力が湧き起こる栄養とエネルギーがいっぱい詰まっています。まだまだ知らない素晴らしい出会いを求めて、もっともっと未知の世界に乗り出したいと思っています。
プライベートではフラメンコも楽しまれているとうかがいました。
毎年フラメンコのレッスンのために、スペインに長期滞在します。隣のポルトガルも大好きなので、自分へのご褒美旅として、いつも一人でゆっくり田舎を巡ります。仕事の効率を上げるためにも、休むことの重要性を最近とても感じるので、今年は2度目の長旅を計画しています。
日本国内では、どのような旅を楽しまれていますか。
海外を巡ることで、日本が海外にいかに大きな影響を与えてきたか、気づくことができました。故郷日本を改めて学び直す旅も、還暦を機に始めました。今は日本の離島に夢中です。船旅は、都会の忙しない時間の感覚をリセットしてくれます。高速船ではなくて、フェリーで何時間もかけて、カモメと一緒に海風に吹かれる船旅は最高です。素晴らしい宝物に出会うためには、ちゃんと時間をかけないと。時間をかける豊かさは、何にも代えられません。
この湯河原を訪れることはありますか。
東京の喧騒から逃れて、心の洗濯をしたいなと思った時に訪れる場所のひとつが湯河原です。渓流のせせらぎや、大人の隠れ家のような静けさが好きです。かつては文豪が滞在して名作を生み出しましたよね。
第二の我が家のような、お気に入りのリゾートホテルに出会えるといいですね。日常からちょっと距離を置くことで、見えなくなっていた大切なものに気づけるから。1泊でも2泊でも、思い立ったら心の声に従って行動あるのみです。
滞在先を選ぶ際に大切にしていることは。
宿の部屋のバスタブは必須です(笑)。海外では浴槽のある部屋を見つけるのはなかなか難しいですが、やはりお湯に浸かると、旅の疲れも吹き飛びます。あとは、知らない町を歩き回ることが大好きなので、路地裏散策が楽しい旧市街のホテルを選んだり。もうひとつのこだわりは、ライティング。煌々と明るい宿は落ち着かないので避けてます。美しい陰影にこだわった照明の宿が好きです。北欧を旅した時に、冬は太陽光が限られているので、朝食のテーブルにキャンドルを灯していてとても素敵でした。夜のほの暗さが美しい都といえばリスボン(ポルトガル)。夜の帷に「ファド」という民謡が流れてくる。これからも、美しい音楽や素敵な陰影に誘われて、地球をもっと旅していきたいです。例えば数千年前の古代遺跡などももっと訪れて、現代でも解き明かせない高度な古代の知恵に学びたい。距離的に遠い異国を旅するだけでなく、遥かな古にタイムスリップできるような、「時間旅行」をもっと探求したいです。
また、この10月から『LISTEN.』の没入型大画面映像を楽しめる場がオープンします。横浜の山下埠頭の「ザ・ムービアムヨコハマ」で開催予定です。ぜひ「体感」しにいらしてください。皆さんの新たな旅の第一歩に繋がればうれしいです。

TOMOKO YAMAGUCHI
1964年生まれ。1988年NHK朝の連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』でデビュー。数々の映画、ドラマで活躍。30代のころから旅をライフワークとし、2010年には世界の音楽文化を映像ライブラリーに収めるプロジェクト『LISTEN.』を立ち上げる。また、この長年のプロジェクトをまとめた同名の著書では、二次元コードから音楽映像を体感できる。2023年YouTubeチャンネル『山口智子の風穴!?』を開設し、好評配信中。
Photographer:Akihide Asano
Hair&Make:Ayana Doi